シェフ ミカエル・ヴレイムット Michaël Vrijmoed
2015年6月
ベルギーのレストラン業界ではシェフの世代交代が静かに行われつつあり、才能ある若いシェフたちの台頭が目覚しい昨今である。今回はゲントに店を持つ若きシェフ、ミカエル・ヴレイムット(Michaël Vrijmoed)にスポットを当てた。
そのまえに、ベルギーにおけるミシュランの星付きレストランの移り変わりを少し説明しよう。1972年はミシュラン・ガイド本にとって決断の年だった。なぜならブリュッセルのレストラン「ヴィラ・ロレーヌLa Villa Lorraine」にフランス以外で初めて3ツ星をつけたからだ。この時はフランスから何十回もインスペクター達が足を運んだといわれる。
以来ベルギーはグルメの国として台頭。特に80年台のブリュッセルは、「ヴィラ・ロレーヌ」、「コム・シェ・ソワ」、「ブリュノー」の3ツ星御三家により、美食の都市としての地位が確立された。
それ以後は、御三家で修行したシェフたちの活躍で、ブリュッセルでは「シー・グリル★★」、「ボンボン★★」、「ル・シャレ・ドゥ・ラ・フォレ★★」、フランダース地方では「デ・カルメリット★★★」、「ホフ・ヴァン・クレーヴ★★★」と、小さいながら美食の国のイメージを維持している。
今回のシェフ、ミカエル・ヴレイムットはモナコのルイ・キャーンズで修行後、「ホフ・ヴァン・クレーヴ」で8年間3ツ星シェフの右腕として働いた。彼の店は、ゲント観光の目玉である祭壇画「神秘の子羊」で有名な聖バーフ大聖堂の近くにある。開店して一年目で1ツ星。翌年の2015年にはゴー・ミヨの「今年のシェフ」に選出された実力者で、「北海のシェフたち」のメンバーである。
「北海のシェフたち」とは、北海で水揚げされても捨てられる人気のない魚や無名の魚をその料理に登場させ、一般消費者への認知度を高めさせる運動を推進するシェフの集まりだ。地球温暖化や人口増加による、世界的な食料不足の危機が騒がれている今、人気のある魚だけの過漁業や熱帯地方の魚の養殖より、足元の北海の宝を見直そうというものだ。
多くの郷土の野菜を使い、豆腐や胡麻、ひじき、キムチなど東洋の食材もさりげなくバランスよく配合した料理は色鮮やかで胃にも快適だ。小鉢に盛られ次々に登場する創作力溢れる料理は楽しい驚きの連続である。
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