ブリュッセルの散歩「アール・ヌーヴォー」「アール・デコ」

2017年1月

19世紀末、建築界のアカデミズム(伝統的形式主義)に対し、後に「アール・ヌヴォー」と呼ばれることになる建築様式が、ブリュッセルで、ヴィクトル・オルタとポール・アンカーにより誕生した。1893年以降(☆)、ほぼ15年の間に100を超えるアール・ヌーヴォー様式の建物が、彼らの弟子または競争者たちにより作られた。この様式は、20世紀初頭、ウィーンでは分離派、スペインではモデルニスモと名称を変えて、世界各地に広がっていくことになる。(☆)オルタがタッセル邸(Hotel Tassel)を建てた年。

美術史家セシル・デュボワは、長年ブリュッセルの「ビエンナーレ・アール・ヌーヴォー&アール・デコ」の主催者であった。その彼女が“ブリュセルの中心地の散歩”と題して、ベルギーが生んだ偉大な建築様式であるアール・ヌーヴォーの建物を紹介する本を出版。ブリュッセルを9つの地区に分けて、簡潔な説明と有意義な逸話やエピソードを盛り込み、建物の写真と地区の地図付きで紹介している。

 

最初の地区として、ソルヴェイ邸(Hotel Solvay)からオルタ美術館(Musee Horta)までの、ルイーズ大通り近辺の10か所を挙げている。なぜルイーズ大通りからかというと、ここがアール・アーヴォーの【発端】であったからだ。

ルイーズ大通りは1864年、街の中心地から山の手のカンブルの森へ抜ける散歩道として作られ、広いエレガントな並木道は馬車が闊歩し、辺りは裕福なブルジョワ階層や貴族が住む高級住宅地として発展した。彼らは新しい建築様式に魅入られ、糸目をつけず注文したため、豪奢な建物が立ち並ぶことになった。蛇足だが、ソルヴェイ邸の玄関は馬車が入れるように大きくとられている。

この地区には、2000年世界遺産に登録されたオルタの3つの建物とアンカー邸などがあり、10か所全てを回っても徒歩で1時間もかからず有名どころを見ることができる。

オルタやアンカー以外のアール・ヌーヴォーの建物についても深く知りたい方にはお勧めの一冊である。続編として「アール・デコ」もある。

Promenades au coeur de la ville

BRUXELLES ART NOUVEAU

BRUXELLES ART DECO

Cécile Dubois著  24,95€

 Racine出版