Pâtisserie De Baere

2012年12月

                      リヨン世界大会優勝ケーキ
                      リヨン世界大会優勝ケーキ

 

 

 

かなり以前にブリュッセルの店を閉め、クノックに移転したパティスリー「ド・バール」。ブリュッセルに住む日本人にはあまり馴染みがない名前ではあるが、知る人ぞ知る有名パティシエ、リック・ドバール氏(Rik De Baere)の店だ。

            壇上右端がリックさん
            壇上右端がリックさん

 

彼は1995年のクープ・デュ・モンド・ド・ラ・パティスリー(coupe du monde de la patisserie 世界パティシエコンクール) にベルギー代表として出場。世界一になった。このときのコーチがドバイヨール氏、リックの他のメンバーがピエール・マルコリーニ氏とギュンター・ヴァンエッシュ氏(アントワープのデルレイのチーフパティシエ)だ。その前年リックはベルギーの最優秀パティシエにも選ばれている。

両親は別の職業だったが、2人の兄が肉屋と仕出し屋という食関係の仕事だった影響で、12歳の時ブルージュの寄宿制の料理学校に入学。16歳でパティシエとして卒業。以後ヴィタメールやマイユーなどの有名店でじっくりと経験を積み、フランスのペルティエ、フォーション、フレソンなどで修業をした。修行は厳しかったが負けず嫌いの性格が幸いし、やればやるほどこの仕事に情熱が湧き、ひまさえあれば他の店を見て回り、研究するという日々だった。自分の欠点を知るためにコンクールに度々出場するようになり、数々の賞をとった。1990年自店をブリュッセルにオープン。素材の質にこだわり手間を惜しまない商品はたちまちにして評判となる。その後、ロンドンに進出するが、故郷の近くに店を出すことを決め帰国した(現在は別の経営者)

周知の様に、クノックの街はベルギーの裕福な階層が家や別荘を持ち、バカンスを過ごす避暑地である。美味しいものに目がないグルメがド・バールを見逃すはずがなく、連日ベンツやフェラーリを乗り付けてパンやケーキを買いに来る。毛皮を着込みダイヤの指輪をした女性やブランド物の洋服を着た人など、客層の質を見ているとクノック事情が分かるというものだ。


ド・バールの店は小さく、一見はどこの街角にもある普通のパティスリーだ。しかしショーウインドーを眺めれば、タダものではないことに気がつくはずだ。伝統菓子も季節感溢れる創作菓子も色つやがよくいずれも食欲をそそる。それもそのはず。この店では当日作りその日に売り切るのだ。冷凍保存のパイ生地やムースとはおのずから見た目も違うし、食べればその価値が分かる。

「素材選びから、お客様にベストの状態で召し上がっていただくため、商品を店に出すタイミングまで全てに気を使います。イースターやバカンスシーズン、年末年始はパンも何回も焼く必要があるぐらい忙しいですが、最善を尽くします。ブリュッセルのお客さまも北海に来た時は必ずお立ち寄り下さいます」。


徹底的な職人気質のアルティザンが、選びぬいた食材を世界一の腕で作るのだからどれをとってもまずいはずはない。ビスケット類やチョコレート、キッシュなどの惣菜も抜群の出来だ。オレンジ風味のクレームブリュレとビターチョコレートのムースの「Coupe Lyon’95」は世界一になった時のケーキだ。今では誰でも使う素材だが、17年前の世界大会では群を抜く味と新鮮さだった。世界一の味をどうぞ。

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