イスラエル エイラットの旅!!

紅海に面したリゾート地

2013年1月

 正月休みのバカンスは、太陽を求めて紅海に行って来ました。飛行機が着陸態勢に入り、荒涼とした茶色の大地に滑走路らしきものが見えてきた。しかし見渡す限り木々の緑が全くない乾いた地面を見て、エイラットに行っても果たしてリゾート地なんかあるのかと心配になってきた。そこで周りのベルギー人たちの様子を伺うと‘バカンス地に着いた!’というウキウキとしたムードではなく、皆静かに黙っている。不安が更に募ってきた。でも結論を先に言えば、‘観る’‘食べる’‘遊ぶ’とその全てにおいて大満足のバカンスでした。

 

 初日、ホテルに近いという理由で入った水中レストラン(海中展望塔の下がレストラン)は、宣伝文句通りに楽しくて美味しい。サンゴや熱帯魚を見ながらの食事に子供達は大はしゃぎ。親はデニス(Denis)いう黒鯛に似た白身魚の塩焼きに舌鼓を打ち、上々のスタートでした(醤油を持参することをお勧めします)。

 気分も盛り上がって散策に出ると、「あっ、ザクロのジュースだ!」と夫。10年前にカラチで飲んで以来の「幻のジュース」との再逅に、興奮気味の夫に引っぱられるようにしてジューススタンドに行きました。1杯が25シェーケル(約750円)は少し高いかなと思いつつ待っている目の前で、大きなピンクのザクロが2個ギューギューと絞られました。砂糖、水など加えない100%の果汁はすっきりと上品な甘さで爽快。ビタミンCを丸ごと吸収し、体内の細胞がトタンに活き活きするようでした。カラチの方は砂糖入りだったので、こちらの方が本物の味というわけで、皆ますます上機嫌。その土地の物はそこで食するのが一番。同じジュースをベルギーで買うザクロで作っても期待できないので“今こそ飲み溜め“とばかり滞在中はたくさん飲みました。

 観光面は文句のつけようもない程充実しています。エジプト国境まで10キロ、ヨルダンまで3キロに位置するエイラットの近くは、映画や歴史の舞台が目白押し。例えば「インディージョーンズ、最後の聖戦」のペトラ(Petra)の遺跡(ヨルダン)、「アラビアのロレンス」のアガバ(Agaba)、ワーディーラム(Wadi Ram)の砂漠(ヨルダン)、モーゼの「十戒」のシナイ山(Sinai)(エジプト)などです。

忘れられないのは不思議な浮遊体験ができる死海(イスラエル)と、サンゴ礁と熱帯魚の宝庫の紅海です

 食について語る時、我々にとってなじみが薄いカシェール(Kascher)というユダヤ教の適正食品規定のことがあります。厳しい荒野での遊牧生活から生まれたこの規定は、ユダヤ人にとっては宗教的そして生活衛生面でも必要なことだったのでしょう。食べられる獣肉はひずめが分かれていて反芻する牛、羊、鹿。豚は絶対にいけません。魚はヒレと鱗のあるもの以外は食べられず、うなぎ、エビ、タコ、貝など日本人が聞いたら「そんなぁ・・・」と言いそうです。泊まったフランス系のホテルでも「規定は守られておりますので御安心を」という表示がしっかりとされていました。外国人用の食事として朝食用には山羊のチーズ、羊の肉などが用意されていますが、いわゆるハムっぽい(豚で作る)ものはありません。カシェールは食材のみを規定するのではなく、料理方法も厳しく、例えば、バターやミルクを肉と一緒に食べてはいけないので、肉の付け合わせのジャガイモのピューレもバターの代わりに植物油系のマーガリンをいれます。はたまたその肉の出所も規定されている等かなり細部まで指示されています。

 我々がおいしいと思ったものをいくつか挙げると、

  国民的料理(ベルギーだったらステーキにフリッツ)のファラフェル(Falafel)。ヒヨコ豆を粉にして丸めて揚げたものに野菜を適当に混ぜ、胡麻ソースなどをかけピタパンにはさんで食べる。

  シュワルマ(Shwarma)アラブ、トルコなどの国でも食べられているので御存知の方もいるでしょうが、店内でぐるぐる廻って売られている円筒状の羊肉の塊。南方系のユダヤ人が主に食べるが、これもピタパンにはさむ。

  カバーブ(Kabab) 羊、鶏などをソーセージ型のミートボールにし串に刺して直火で焼く。(これは店により味にかなりの差あり)

  シャシリーク(Shishilik) 各種の肉の串焼きで炭火で焼く。若鳥のものはとてもジューシーで正に日本の焼き鳥。トルコでも同様のものを食べたが、トルコのものよりスパイスが塩辛くなく控えめで、素材そのものの味がでている。

  野菜類は豊富なので旅先でも恋しくなるということはなく、東北地方の漬物にそっくりな赤カブ漬けには感動した。

お勧めでないのがデザート。どれも私たちには異常に甘すぎて辟易でした。

 これらカシェールのレストランは、ユダヤ教の安息日の金曜日の日没から土曜日の日没まで閉まります。もちろん全てのレストランがカシェールではありませんが、商店も含めかなりの率で閉店になります(ホテルでも大きいレストランの方は休みですが、ビュッフェならオープンしている)。ユダヤ教では週の7日目は安息のため、一週間は日曜日(第一日目)から始まり金曜日のお昼までが仕事をしたり学校に行ったりと活動の時にあたります。金曜日の日没、3つ目の星が輝く頃(5つ目だったか忘れましたが・・・)安息に入り、シャバット(Shabat)がスタートするわけです。ちなみにシャバットとは数字の「7」を意味するそうです。

 最後に治安について一言。いつもテロの恐怖があるため観光客といえショッピングセンターに入るにも手荷物検査があるし、もちろん国境、空港などでは荷物も含めて厳重なチェック及び係官からの質問があります。でも、どの係官も若い女性でにこやかに対応してくれ威圧感はなく、子連れでも怖いということはありませんでした。しかし、宗教や民族の対立というものを身近に知らない日本人には、到底計り知れない深いものがあるのだという感慨が残りました。

 満足した旅行となった余裕のせいで、着陸した時とは打って変わり、褐色の大地に親しみさえも感じ“この厳しい自然の中をモーゼはユダヤの民を連れて歩いたのか・・・”と、荒々しい風景に見いりました。

*この原稿は少し以前に書かれたものです。治安面など現在は違っていると思われるので、充分な下調べをお勧めします。