レストラン Bon Bon Christophe Hardiquest 

2013年8月

     

 

 

 

 

     Bon Bon

   453, Av. de Tervuren 1150-Bruxelles

   Tel :+32 2 346.66.15

   www.bon-bon.be


 

サンカントネールの門からソワーニュの森へと続くテルビューレン通りは、マロニエの大木が長く続く美しい通りだ。この通りに沿って、裕福な階層の人々が住む閑静な高級住宅地が発達した。レストラン「ボンボン」がテルビューレン通りに移転して2年経つ。オーナーシェフはクリストフ・アーディケ(Christophe Hardiquest)37歳。今をときめく人気シェフのひとりだ。

 

クリストフが料理の道に進むきっかけとなったのがおふくろの味、いやおばあちゃんの味だ。彼女が作るおいしい料理に影響され、14歳のとき寄宿制の料理学校へ進んだ。自分の人生で一番楽しく愉快な時だったと回顧する4年間の学生生活を経た後、ベルギー、フランス、ニューヨーク等で修業を積んだ。


 

 家具に囲まれて

 

ベルギーの有名シェフの下や星付きレストランで働きながら自店のオープンを考え始める。しかし資金がない。そこで考えたのが間借りだ。家具のショールームの片隅を借り、二坪の食事コーナーをスタートした。12年前だった。「資金はなかったけれど、やる気とアイディアはたくさんありました。今でこそ、高級車のショールームの一部がレストランといったスタイルもありますが、当時はそんなことは考えられない時でした」。ガス台も冷蔵庫も鍋もすべて家から持ち込んで、まさにゼロからの出発だった。

確かな腕と創作力、間借りのアイディアもうけて、たちまち評判となった。その後、古いカフェを改装した小さなレストランを開店。翌年、噂通りに一つ星を得た。以後予約が取れないレストランとして8年間。広いキッチンを求めて現在の場所に移転した。

 

 

まかない料理


「お客様に最高のおもてなしをするにはスタッフが快適に働く必要があります。ですから週末と月曜の昼は定休。充分休養をとります。料理や食材を知らなければ説明できないので、まかないの食事も手を抜きません。お客様にお出しする肉や魚の、お出しできない残りの部分を使いますが、良い食材には変わりありません」。

夏のある日のまかない料理は、マリネしたレモンの皮、平パセリ、ケッパー、レモン汁で味付けしたクロダラ。夏らしい爽やかな色合いと、さっぱりした地中海風味が食欲をそそる極上のまかない料理だった。ビデオで撮ったものは、家庭で作りやすいようにとフライパンを使ってくれたが、20人分のまかないはオーブンで一気に。付け合わせは、夏休みの直前だったので、残り野菜の整理のため、茹でたジャガイモと野菜を粗めにマッシュしたストゥンプ。日本的にいえば、残り野菜でチャーハンを作るようなものだ。パティシエが作った、フワフワに軽いチョコレートムースがデザートだった。

金曜日だけはスタッフが交代で腕を振るうそうだが、シェフ自ら毎日作るまかない料理。スタッフの感想を聞くと“何軒かの店で働いたがこんな店は始めて。毎日が楽しみ”、“ホテルのグルメレストランにいましたが、まかないは雇いのおばさんが作るグルメとは無関係のものだった”等々。スタッフ全員、大満足で仕事に取りかかっていった。

 

 

レストラン

オープンキッチンと広く明るいダイニングルーム。テーブル数が思ったより少ないのは、充分なサービスが提供できるよう35席に押さえてあるため。

 ある日のメニューは、はまちと子羊。アーティチョークの香草クーリをかけたはまちには、よく冷やしたフォワグラの粉末とカリッとしたライスパフが添えてあり、食感や味の違いが楽しい。正確な火入れをしたメインの子羊には、フムス、コリント産の白ブドウの天ぷら、赤ピーマンのフラン、フダンソウのカネロニがあしらわれ、まるで皿に絵を描いたよう。完成された各々の味が他の食材と相まってさらに滋味を増した一皿だった。その後チーズ、デザートと続き、最後に自家菜園のハーブを使ったハーブティーで締めくくった。

 

素材の味とそのハーモニーがなにより大切というシェフは、新しい素材の探求に熱心だ。そのため年2回は外国旅行をする。その土地で得たものを自分のなかで消化し、自分の味を創造するという。夏休みは家族とポルトガルに行ったので、それがどんな形で料理に登場するか今から楽しみである。

 

本日のまかない料理