シチリア食い倒れの旅-リッチ・ディ・マーレ(ウニ・スパゲティ)狂想曲-

2012年9月

©Fototeca Enit
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新婚の友人の「シチリア、良かったですよー」という一言で夏のバカンス先を決定した我が家。(今は真冬ですがどうか陽気なラテンの気持ちで読んで下さい。何時行ってもシチリアは真夏のハートで迎えてくれるはずです!)さらに出かける前には、概に先行して休みを取ってシチリアに行かれた同僚の方が、「ウニ・スパ、美味しかったですよぉー!」と余計な一言を付け加えてくれたおかげで、頭の中は“ウニ”一色。「うに」といえば日本では“江戸前寿司”。軍艦巻きにとろり新鮮なうにを…または北海道の“うに丼”…と、今でも生唾者ですが、よっぽど飢えていたのでしょう。ちょっと柔らかすぎるベルギーのスパゲティーに辟易していた私達にとって「江戸の仇(かたき)は長崎で…」と言わんばかりに力を入れて本場スパゲティーの国へ旅立ったのでした。

 

ところで、乱暴な運転はベルギーの“十八番(おはこ)”かと思っていましたが、ここシチリアもかなりのもの。はなから運転しない積りでいた我らにとって、空港からのタクシーの運転はかなりの恐怖でした。追い越しの際、素直に左追い越し車線には出ず、曖昧に車線を跨ぎ、一方抜かれる側は押し出されるように路肩側の車線を跨ぎ…、タクシーはチコチコ左のウインカーを点けたまま走ること20分以上。(レンタカーを借りられる方は、道も狭いので気をつけて下さい)。

©Fototeca Enit
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さて、本題。我々は映画「グラン・ブルー」で有名なタオルミーナに腰を落ち着けました。夕闇も押し迫っていたので初の夕食はホテルで。おっと、いきなり本塁打!フンギ(Fungi)のスープ、絶品でした。ワインは是非シチリアの名ワイン、白の「コルボ(CORVO)」をどうぞ。翌日から始まった「海の幸」の数々。まずは、本命「ウニ・スパゲティー(Spaghetti ai Ricci di Mare)」。狂喜乱舞、通算7食完食(6泊7日朝食付き)、5店で味わいました。これを“至福”と呼ばずして何としましょう。味付けは各店若干の違いはあるものの、どの店でもなかなかの味わいでした。強いて言えば生ウニの風味を極力残している調理法に、より好感が持てました。最初の店のウエイターさんが「UNI?(日本語のウニは皆知っているようです)僕はこれが一番美味しいとおもうよ」と親指を立てて(Good)同意してくれました。更にウニを極めたい方にはオードブルで生ウニを出している店もありましたのでお試し下さい。“ウニまみれ”の私をなかば呆れ顔で見ていた連れ合いが挑戦していたのは「あさりのスパゲティー(Supaghetti Vongole)」などのあさり系。これがまたお勧めなのです。ブイヤベース風海の幸の煮込みは本当に美味しく、日ごろの憂さも吹っ飛ぶ極楽の味わいでした。

 

話が先走りましたが、イタリアの食事はカルパッテョ等の「アンティパスト(前菜Antipasto)」、スープやパスタの「プリモ・ピアット(第1の皿Primo Piatto)」、大抵の日本人はここでかなりの満腹感を感じると思うのですが、さらに肉や魚などのいわゆるメイン「セコンド・ピアット(第2の皿Secondo Piatto)」、そして「ドルチェ(デザートDoluce)」と続きます。女性なら「アンティパスト」と「プリモ・ピアット」あたりまでで充分でしょうか。健啖家のご主人なら「セコンド・ピアット」を頼み、ちょっぴりそのご馳走を相伴に預かるというのも得策です。お酒に強い方なら、最後にイタリアの名食後酒「グラッパ(GRAPPA)」をどうぞ。その他、特質すべき料理としては、タコや白身魚のカルパッテョ(生)、海老(Gamberi)のグリルや、新鮮な海老みそを使ったフィットチーネ。ダイナミックなイカの炭火焼きなどが印象深かったですね。海に囲まれた地の利ならではです。

お店のお勧めに従って飲んだ、地の白ワイン「エトナ(ETNA )」も美味かったこと。メニューは大抵店の前に張り出してあるので、じっくり時間を掛けて店選びが出来ます。でもさすが、6日目はやや食べ疲れ気味。気分を変えて軽くピッツエリアへ。数ある店の中からこれ!と言う店を選ぶ時の基準として、ウエイターさん達がきびきびと働き、店の活気が感じられる所ならまずOK。気取らない雰囲気の中、とても美味しいピザと出会いました。シチリアは何処を切っても美味しい、金太郎飴のような所ですね。

 

限られた日数の中、出来るだけ間違いの無い店にヒット出来るように、と思うとどうしてもガイドブックのお世話にならざるを得ません。つい“M”ガイドブックを頼りにしたくなりますが、海辺の地方だけに、かえって日本版のガイドブックの方が、日本人の味覚にあった魚介類の調理法の店を紹介しているようにも思いました。海の幸、食い倒れにはもってこいの島、シチリアへ一度行かれてみては如何ですか?