カナリア諸島  îles Canarie

 

2014年12月


今年の夏はどこか南の島へ行きたい。そう思い、いろいろ調べていたとき、知り合いから勧められたのがカナリア諸島でした。なにしろ僕たち学生にはギリシャやイタリアなどの島は高すぎますが、カナリア諸島はとてもリーズナブル。どうやら見どころもたくさんあるらしいので決めました。



アフリカ大陸の北西沿岸からわずか100kmほどの大西洋に浮かぶ、7島からなるこの群島は、スペイン領でスペイン語を話します。一日目、ブリュッセルから州都のグラン・カナリアに朝の8時に着きました。ホテルは隣のテネリフェ島にあるので、直ぐにでも行きたかったのですが、なんとフェリーは一日二本という不便さ。仕方なく夕方のフェリーに乗るまで、グラン・カナリア観光をしました。


この地はかのコロンブスが新大陸発見を目指す航海の最後の補給基地港として拠点を構えていたことで有名で、空港から北へバスで20分ほどのラス・パルマスの旧市街にコロンブスの家があります。家は博物館になっていて、彼の伝記や、航海で開拓していった新世界の地図などが展示されています。小さくて綺麗な街にポツンとたたずむその家。歴史好きにはたまらない観光スポットだと思います。



やっとフェリーでテネリフェ島に到着。夕食は美味しい食事を探しに広場に出ました。その時はちょうどサッカー「ワールドカップ」の時期で、食事をしながらテラス席でスクリーンの試合が観戦できました。島なので魚介類が美味しいはずとタラのムニエルとスープを注文。魚の旨みがしっかり出ているスープやメインも良かったですが、一番印象に残っているのが、サイドで出てきた「ジャガイモ」です。



カナリア諸島は、ベルギー同様、ジャガイモが有名だそうで、何を取っても必ず出てきます。じゃがいもは、パパス・アルガダスといい、スペイン語でシワシワのじゃがいもという意味。皮付きのまま塩水(本来は海水)で茹でた後、大部分の水を捨て、じゃがいもが乾くまで少量の水で煮詰めると、表面に塩の結晶が付着する現象が起こるそうです。ソースはモホといい、三種類あり、このソースにつけて食べるのが一般的です。僕たちが食べたものは、一番基本的な味で、オリーブオイル、にんにく、パプリカ、クミンがベース、そこに酢、レモン、オレンジ、ライムを加えたものでした。赤いモホは唐辛子、緑はペッパーがベースです。白はタルタルソースのような味でした。ベルギーのジャガイモの美味しさを知っているので、期待もせずに食べてみると、これがなんとも旨い。塩で茹でてあるだけなのに、ジャガイモ本来の味が味わえます。決して肥沃な土地ではない島で、たくましく育ったことを感じさせる味でした。


翌日は、町はずれの小さな村へ足をのばし、ひなびた風景を楽しみました。観光地から比較的離れているので、観光客は僕たち以外いません。観るようなものは何もありませんが、地元民のみの静かな雰囲気を肌で感じ、彼らの素顔が垣間見られて、とても有意義な時間に感じました。


夜はスーパーでビールとおつまみを買い、サッカー観戦をしました。スペインのビールは種類によってはものすごくクセがあるそうなので、一番スタンダードなDORADASAN MIGUELを試しました。DORADAのピルスナーは、無難な味で飲みやすいですが、SAN MIGUELはまずいのなんのって! まるで麦茶をビールに混ぜたような味で、しかも麦の風味が強すぎて、味のバランスが悪いと思います。聞くと、SAN MIGUELはフィリピンのビールだそうです。世界一と言われるベルギービールに慣れているので、結局、SAN MIGUELのほうは一口でやめて、ずっとDORADAを飲んでいました。


三日目、南の島の浜辺とはなんたるかを肌で感じようと、テネリフェ島南部のロス・クリスチャノスという、ビーチ沿いの町まで行きました。天気は若干の曇りでしたが、潮風が気持ちよく、南国のゆったりとした雰囲気に浸りました。

夕食は、トリップアドバイザーで断トツの高い評価の”Tapas Pato De Oro”に行きました。店のおしゃれな雰囲気と、店員の粋な接客で、食事前からすでに上機嫌の僕たち。食感を残しつつ、にんにくを利かせた濃厚な茸のポタージュから始まり、ガスパッチョ、スペイン風オムレツ、チョリソーの鉄板焼き、ツナと玉ねぎのマリネ、イカリング、どれも日本人になじみ深く、今まで食べてきたスペイン料理の中でも格別の美味しさでした。



四日目、テネリフェ島南部の港からフェリーで30分ほどのところにある小さな島、ラ・ゴメラ島を訪れました。ここには、ガラホナイという国立公園があり、他の島とはまったくタイプの違う雄大な自然を体験することができます。交通機関が整備されていないので、港でタクシーの運転手と値段交渉をし、一日ガイド付きで周ってもらいました。窓越しにみえる自然の畏れは、緑の多い他の島とは違い、岩肌が剥きでていて、たくましく、まるで人知の及ばない何かを感じさせられます。その荘厳さに圧倒されっぱなしの一日でした。


最終日は世界遺産に登録されているテイデ国立公園へ行きました。当初は予定になかったのですが、ホテルのフロントのお兄さん曰く、テイデに行かなければテネリフェにきた意味がない!とのことで、急遽行くことに。観光客が個人で行くのは、とてもではないが無理だと言われ、ツアーバスでの移動にしました。ツアー開始後、まず感心したのは、ガイドの語学力。スペイン語、英語、フランス語を自在に操り、てきぱきとガイドする姿にはすごいの一言でした。ぐねぐねした山道をひたすら走り、国立公園に入ったとたん、まるで映画の中の世界のような壮大な景色が現れました。それもそのはず、ここは、映画猿の惑星のロケ地にもなったところで、映画を見たひとには、あの異世界のイメージがぱっとイメージできると思います。旅の終わりに圧倒的な自然のパワーをもらい、大満足の旅行ができた僕たちでした。