香港の食生活

               2013年6月

      

 

香港は狭くて大気汚染もひどいのに、男女とも平均寿命が80歳を超えた長寿国。医療水準の高さや経済力の豊かさだとも思いますが、人々が医食同源の暮らしをしていることが寄与しているように思えます。そんな香港人の一面をご紹介しましょう。

 

朝、市場に買い物に行くと、豚を解体しているのを待つおばちゃん達をよく見かけます。見ていると気分が悪くなるので、すぐ通り過ぎていた私です。が、地元の人によれば、香港人(特にご老人)は冷蔵庫に一度保存された豚肉は新鮮ではないと信じているので、解体直後の肉を買うために並んでいるのです。魚屋でも魚が活きたままエラをバクバク、カエルも生きたまま。SARS騒ぎ以前は、鶏も売っていました。日本では衛生上の問題で無理でしょうが、鮮度から言えばこれ以上のものはないですね。

日本でも、冷たいものの食べ過ぎは体を冷やすと言われますが、香港では、ハーゲンダッツや、スターバックスなどの外資系を除けば、冷たいデザートほとんどありません。代わりに、お汁粉(写真は黒ゴマ汁粉)、暖かい豆腐のデザートや牛乳プリンなどに人気があります。年配の方は、冷たいフルーツも食べません。冷蔵庫にフルーツを入れるのはあくまで保存のため。冷蔵庫から出しても、常温に戻してから食べます。湿度が高く暑い香港ですが、レストランで出されるお茶は必ず熱く、何でも氷を入れてしまう日本とは大違い。けれど冷房はどこもガチガチにききすぎてカーディガンは必需品。からだの内を冷やさなければ、大丈夫ということでしょうか?

 

国土が狭い香港では、多くの食物を本土である中国産に頼っています。しかし農薬問題で悩まされます。基準値を上回った野菜(毒菜)が出回ったという記事を何度か目にしました。そうすると、急にスーパーに「野菜はよく洗って食べましょう!」という注意書きが張られたりします。そこで、香港人が、農薬から身を守るためにやることは、葉物の野菜は1時間以上水につけるか、専用の洗剤を使います。試しに水に一時間以上つけたら、水が気持ちのわるい黄土色になり恐ろしい思いをしました。もう一つの方策は金銭的に余裕があれば、全て日本産の米や野菜、果物を買うことです。安全でおいしいということで、日本の農作物は高くても香港でとても人気があります。

 

香港には日本にはない体に良い食べ物や飲み物がたくさんあります。珍しいところでは、デトックス作用のある「亀ゼリー」。これは、亀の甲羅や腹甲を干して粉砕した粉末と甘草など数種類の生薬で作る薬膳のデザートです。街中で見かけるのは漢方茶のスタンや豆乳の店、注文を受けてから果物を絞るジューススタンドなど。香港を訪問したら、ふかひれやアワビなどの高級中華料理だけでなく、こんな香港人の元気の源を召し上がってはいかがですか。