アルガン・オイル  Huile d’Argan

2013年1月

アルガンツリー(アカテツ科)の実から絞った油がアルガン・オイル。ビタミンEの含有量が多く、体にも美容にも良い油です。10年前の西欧では手に入れるのが困難だった幻の油ですが、今はスーパーでも手に入ります。

 

トゲがある枝をもつ約10メートルの高さの木は、モロッコの西南地方約80万ヘクタールの土地のみに自生しています。ユネスコは、北アフリカの砂漠化を防ぐものとして、1998年この地方を世界遺産と指定しました。アルガンツリーはアルガン・オイル生産という重要な地方産業を興し、その枝は人々の燃料、葉や実はヤギの大事な食糧となっている。まさに西南地方の救世主だ。

 

[作り方]

大昔は、果肉のみを食べるヤギが地面に吐き出した「硬い種」を拾って油を抽出したそうですが、現在ではそのようなことはありません。特にバイオのラベルが付いた製品は、8月~10月頃に完熟して地面に落ちた果実のみを使用しています(完熟しない実を竿などで叩き落とすのは禁止)。

腰をかがめて実を拾い、とてつもない時間と労力をかけて作るのがこの油です。これは全て女性の手作業の賜物なのです。

 

作業:

① 生の果実を太陽で乾燥させる。乾燥したら果肉と実を分ける。

② クルミの殻の16倍の硬さといわれる殻を、2つの石で砕き割り、油分を含む種を取り出す。種の中の白い核(仁)を壊さない様に採集する。

③ 粘土製の大皿に仁を入れ数分軽く煎る。

④ 石臼で潰しペースト状にする。

⑤ 深皿に入れ、タイミングを見ながら3回温水を加えながら、何時間もかけて捏ねて油を絞り出す。

美容用のオイル
美容用のオイル

100kgの生の果実を乾燥させると60kgの乾燥果実となり、果肉と分けると30kgの実が採集され、2kgの種が得られます。この2kgの種から、12時間かけてやっと1リットルの油が絞られます。アルガン・オイルはよく「砂漠のオリーブオイル」と称されますが、オリーブオイルは果肉も種も全て使用するのに対して、この油は種だけであることを考えると、その貴重性がはるかにオリーブオイルを越えることは明白です。

 

アルガンツリーは、砂漠で2百年以上も生きる生命力があり、その実の油に栄養がないはずがなく、美容界では密かなブームを呼んでいます。というのも、この油には豊富なビタミンEが含まれているため、抗酸化や皮膚の老化防止力が高いのです。また不飽和脂肪酸は血中のコレスステロール値低下などに有効なため、健康志向の今日、注目されています。

食べ物用のオイル
食べ物用のオイル

 

[料理法]

また、そのたぐい稀な香りにより、有名シェフの間ではとっておきの油として人気があります。焙煎したオイルはハチミツ色で、焙煎しないものはレモン色。ごま油の香りが大好きな日本人には焙煎したものがお勧め。料理法は、シェフ達がジャコウまたはピーナッツの香りと呼ぶ独特の香気と、まったりとしたテクスチャーをいかすように、そのままで料理と合わせます。オリーブオイルのようにパンに付けて食べたり、スープに落としたり、サラダドレッシングとして使用します。また魚や肉のカルパッチョや焼き魚、肉の焼き汁に加えても美味しいです。